2019年12月12日。政府与党から「令和2年度税制改正大綱」が発表されました。今回の改正案には、海外不動産への投資を検討されている皆さま、及び、既に投資をされている皆さまにとって、非常に大きな影響を与える内容となっています。この改正案は、2020年1月に国会に提出され、3月末までに同法案の国会審議を経て、改正案が成立するプロセスを踏みます。
これまでは海外不動産を用いた所得税対策が喧伝されていましたが、本記事では海外不動産を使った節税の今後について考えていきたいと思います。
これまでの海外不動産を用いた節税
これまで海外不動産といえば、木造22年超の居住用物件により発生する減価償却費を用いた個人の所得税対策として活況を浴びてきました。具体的な仕組みについては、この記事での説明は省略しますが、特に木造建築物で建物割合が高い物件が多い、米国のテキサス州などの物件(物件次第では建物割合90%超も存在します)は特に好評を博し、近年海外不動産を扱う業者が増え始めたというのも現状です。このような富裕層向けの所得税対策が蔓延したことに対して、当局も黙ってはいられません。会計検査院は2016年11月7日に「国外に所在する中古の建物に係る所得税法上の減価償却費について」という報告を出しました。その中身は東京都内税務署のいくつかを主な調査対象とし、海外不動産から生じる多額の減価償却費を計上している納税者に関して調査し、財務省に対策を検討するよう依頼する内容となっていました。木造22年超の居住用物件は簡便法で4年での減価償却を認めていたものの、その耐用年数と実際の耐用年数には大きな乖離が生じているのではないかとの指摘がなされました。
令和2年度税制改正及び今後の節税
その後、約3年の時を経て昨年令和元年12月12日に政府与党より「令和2年度税制改正大綱」が発表され、海外不動産を用いた所得税対策にメスが入る展開となってきました。今回発表された税制改正の内容を読み解いていきたいと思います。
過去に取得した不動産にどのような影響を与えるのか(特別な措置が講じられるのか)についてと、法人が所有する場合の扱いに関しては記載がなく、今後の審議が注目されます。
これまでは減価償却費による4年償却を主眼においた海外不動産投資が横行していましたが、今後はこの状況が変わってきます。これまで以上に海外不動産は投資の側面が強くなります。しかし、そもそも海外不動産「投資」と名打っておりますので、本来あるべき姿に回帰してくるのではないでしょうか。
まとめ
今後の国会審議で詳細がどう決まっていくのか注目されますが、国外中古建物の減価償却費を利用した節税という従来のスキームでの節税は困難になることは間違いありません。一方で、国外の不動産から生じる所得間での損益通算は可能であることと、譲渡所得の計算に生じなかったこととみなされた減価償却費は計算上、取得費から控除しないことを考えると、保有中の税引後のキャッシュフロー、売却時の税引後のキャッシュフローは高くなります。一般的な投資物件を現金で取得する前提での税引後のキャッシュフロー比較では、節税効果を含む場合と含まない場合で、大きな差が出ないシュミレーション結果となります。節税効果は取り込めなくても、米国など安定的かつ価格上昇を見込めるエリアでの不動産投資は、他の投資案件との税引後の数字で見比べてみると魅力的に映るでしょう。節税効果がなくなることで、売った方が良いケースと悪いケースについては別途記事にしてご覧いただきます。
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