海外不動産と聞いて、皆さんはどの国を想像するでしょうか。日本の方にとって、経済、政治、文化など、不動産に限らず多方面での接点からか、一番最初にイメージする方が最も多いのが『アメリカ合衆国』ではないでしょうか。「広大な土地」、「夢と自由が溢る国」、「ビジネス・エンターテインメントでの成功を掴むことができる」など、ステレオタイプなイメージを持っている人も少なくないと思いますが、50の州で構成される合衆国であるアメリカは、州や都市ごとに様々な顔を持ちます。一括りにアメリカと捉えず、都市単位で向き合うことで取り上げられる話題もたくさんあります。アメリカに限らず海外不動産投資を検討時、私たちはその国や都市のことをどのくらい理解していて、語ることができるでしょうか。まず国を知り、街を知る、そのプロセスは省くべきではありません。大切な資産を投資するからには、その国がどのように成り立っているのか、これから先どうなっていく可能性があるかなどはできるだけ知っておきたいものです。まずこの記事では、アメリカ合衆国の基礎的なことから紹介していきますが、次に代表的な州、都市とエリアを狭めながら鳥瞰的な視点で見ていきます。
1. 首都・主要都市
アメリカの首都はワシントンD.C.です。1776年のアメリカ独立後、各州の利害関係を考慮した結果、1791年にワシントンD.C.がアメリカの首都として選定されました。現在では政治家に対する駐車場の優遇制度など政治家にとっては活動がしやすいことから、「政治家の町」として認知されています。
人口別の主要都市としては、下記の通りです。
アメリカ合衆国国勢調査局によると、人口成長率別の主要都市は以下の通りです。
1位~7位までの都市が5年間で10%以上成長しており、アメリカ合衆国国勢調査局の調査によると2017年7月1日~2018年7月1日のデータではテキサス州(上図2位と3位のAustinとFort Worthを含む)の人口増加数が約379,000人に達し、全国1位を記録しています。
2. 人口
総務省統計局の「世界の統計2019」によると、2018年のアメリカの人口は3億2,680万人で、今後も人口は上昇傾向にあり、2050年にはおよそ3億8,959万2千人になると予想されています。
世界銀行発表の統計データによると、1960年 - 2017年のアメリカの人口増加率は、以下の通りです。
他国の人口増加率と比較しても、アメリカには大きな変動がないものの、90年代半ばから減少傾向にあります。
3. 人口分布率
1960年代のアメリカは若い人口の流入が多い都市に見られる典型的な形です。1990年と2020年にはこれらの若者の層が上部に移動していく一方で、出生率が低くなるため2050年にはつぼ型の人口ピラミッドになると予想されています。
4. 宗教
アメリカでは信教の自由を憲法で保障しています。国民の約75%がキリスト教徒(プロテスタント50%、カトリック25%)ですが、近年では、若い世代を中心に無宗教である人々が増加していることも特徴です。また、イスラム教信者が比較的多く住む地域では、ヘイトの対象となることがしばしばあります。
5. 主要産業
・GDP
総務省統計局の「世界の統計2019」によると2016年におけるアメリカの国内総生産(名目GDP)は18兆6244億ドル(日本・4兆8,985億ドル)で、世界1位の経済規模を誇っています。
また、下図は1人あたりGDP(USD)を表しています。
リーマン・ショックの影響を含む2005-09年では、景気後退が原因で一人あたりの実質GDP成長率を押し下げましたが、一人あたりのGDPに関しては年々増加傾向にあります。
・主要産業
工業(全般)、農林業(小麦、トウモロコシ、大豆、木材他)、金融・保険・不動産業、サービス業
外務省のデータによると主要貿易品目(2018年)は以下の通りです。
(1)輸出:自動車部品,工業用機械,航空機,自動車,医薬品
(2)輸入:医薬品,携帯電話及びその他生活雑貨,自動車部品
対中国貿易戦争が騒がれている中、トランプ政権による保護貿易のリスクもあり、その場合世界各国が保護主義的な貿易を行う可能性に伴う、国際的な競争力の低下が懸念されています。
5. まとめ
アメリカ合衆国のGDPは世界一です。経済の面だけでも、その他の国へ与える影響は大きく、どの国でビジネスを行うにもアメリカ合衆国の動向からは目を離せません。もちろん海外不動産に与える影響も大きく、特に新興国における海外からの投資マネー、為替の動向などにおいては、アメリカ合衆国の景気動向や政策見通しなどに影響を受ける点も多く見られます。単に知りたい国を知ることだけでなく、各国のデータを読み解いていくことで海外不動産投資にかける可能性を着実に見出していくことが大切であり、世界を知ることもまた海外の不動産を持つ魅力のひとつといえるのではないでしょうか。