アメリカにおける不動産への担保設定

全般 融資

日本国内で不動産の購入/投資を行う際、金融機関から不動産購入資金を借り入れする場合に抵当権(※場合によっては根抵当権)を設定してほしいと言われたことがある方も多いかもしれません。それでは、日本ではなくアメリカ不動産の購入時には担保設定に関してどのようなルールがあるでしょうか?今回はアメリカにおける不動産への担保設定に着目していきます。

アメリカ不動産への担保設定

アメリカでは債権保全のために不動産担保を用いた方法は主に2種類存在しており、「Mortgage」と「Deed of Trust」と呼ばれています。 

1.Mortgage 

Mortgageは、債務者の持つ不動産に対し、債権者の権利を設定する手続きです。また、債権者と債務者との間で結ぶ2者間での契約です。この契約を行うことで、不動産には担保設定がなされますが、所有権は債務者のままであることから日本の抵当権と性質は近い制度だと判断できます。Mortgageを設定すると、情報が公的に登録されます。すなわち、どの不動産にどのくらいの担保価値があるのか推測できるようになります。そして、債務の弁済が全て終了するとMortgageの役割も終了となります。 

万が一弁済ができなくなったときには、裁判所を通して当該不動産の差押えや売却へと進んでいきます。そして売却を行い、その代金から弁済を行うという流れになります。裁判所が介在するため、この一連の手続きには時間やコストがかかるという特徴があります。 

2.Deed of Trust 

Deed of Trustは日本では「信託証書」と訳されることが一般的です。この制度ではTrustor(委託者、この場合は債務者)、Beneficiary(受益者、この場合は債権者)、Trustee(受託者)の三者間での契約を締結します。その契約において、「もし債務者が返済できない場合に、当該不動産を債権者は自由に処分することができる」といった内容が含まれております。このDeed of Trustを設定した契約もMortgageと同様に公的に登録されます。 

弁済ができなくなった場合には、Beneficiaryである債権者は当該不動産を売却する権利をTrusteeと裁判所に請求することになります。そして、Trusteeが売却活動を行い、その代金から債権の回収を行うという流れになります。この権利を実行する際に、裁判所による差押えは不要であるため、 手続きが完了するまでの費用や時間はかからないのが利点と言えます。 

まとめ

上記ではアメリカにおける2種類の担保設定に関する制度を紹介いたしました。どちらの制度を利用するのかは州によって異なります。Mortgageをメインに取扱う州は主にアメリカ東海岸や五大湖周辺及びハワイ州です。それとは逆に、中西部や西海岸の州ではDeed of Trustの利用が慣習となっており、その州の合理的な思考を垣間見ることができます。 

国が異なれば、取引に関する商習慣や法律、制度なども異なってきます。担保設定に関して、投資のパフォーマンスに直接影響することはないかもしれませんが、州の様々な特性をつかむことで投資先の選択肢や新たな可能性を見つけ出せるかもしれません。 

関連記事

この記事へのコメントはありません。